近年は環境問題やSDGsへの取り組みなどの観点から、電気自動車(以下:EV)への移行の動きが進んでいます。
これまで100年以上もの間主力とされていた内燃機関のエンジンが全く新しいプラットフォームであるモーターに変わるのは、大きな変革と言えるのではないでしょうか。
当然ながらEVはガソリン車と比べて機構が異なるため、性能に大きな変化が生まれます。
もちろんタイヤに求められる性能も変わってきますので、タイヤも変革期を迎えていると言えるでしょう。
そこで本記事では、EVは今までのガソリン車と比べてどのように異なるのかや、どのような性能が必要なのかについて詳しく解説していきます。
後半にはおすすめのEV向けのタイヤもご紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
もくじ
電気自動車移行に向けての世界の動向は?
世界の自動車メーカーがEV化を進めるきっかけとなったのは、2015年に採択された「パリ協定」です。
深刻化が進む地球温暖化に歯止めをかけるよう世界各国がCO2の削減目標を提唱。それに伴いガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの内燃機関を搭載する新車販売の禁止を掲げ、各自動車メーカーはEV車の開発に一層力を入れるようになりました。
まずは各国のEV化への移行の流れをご紹介していきます。
ヨーロッパ
EUでは2035年にガソリン車を全面廃止とすることで世界に先駆けてEV化への動きを見せていましたが、2023年にEV化法案が再度見直されることになりました。
これにより、水素と二酸化炭素からつくられる合成燃料「e―Fuel(イーフューエル)」を使う新車であれば2035年以降も販売可能となりました。
このようにEV化への動きに若干ブレーキがかかりましたが、EV化自体への流れは止まることはないでしょう。
アメリカ
アメリカでは州ごとでそれぞれEV化への政策が実施されています。
ニューヨーク州ではカリフォルニア州に続き、2035年までに電気自動車・プラグインハイブリッド車・燃料電池車以外の内燃機関を積んだ車の新車販売を禁止することを決定しています。
ほかにも、EV車の新車購入時に補助金が出る州もあります。
アジア
アジアではヨーロッパや北欧よりもEV化自体を大きなビジネスチャンスと捉えているようで、インフラ整備やEVへの新規参入が活性化しています。
特に中国では車体価格やランニングコストが低価格に抑えやすいことに加え、補助金などの優遇措置も整備されています。政府も独自の評価制度で自動車メーカーのEV開発を後押ししています。
日本
日本ではパリ協定の枠組みをもとに、政府は2035年までに新車販売の100%を電動車にすると発表しています。
電動車・・・電気を動力源として使う自動車のことを言います。100%動力が電気の電気自動車(EVまたはBEV)以外にも、燃料電池自動車(FCV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEVまたはPHV)、ハイブリッド自動車(HV)も含まれます。
参考:経済産業省 資源エネルギー庁
また、東京都では乗用車は2030年までにガソリン車の新車販売をゼロにすると発表しています。
ただし、日本はインフラの普及がまだまだ追いついていません。
そこで現在は「ホンダ e」のように、あえて航続距離を抑えたモデルを発売するなど、日本独自のEVモデルの販売が進んでいます。
電気自動車(EV)に乗り換えると
上記でご紹介したように、主要国は2035年を一つの境目としてEV化への動きを見せています。
ではガソリン車からEVに乗り換えると、どのような変化が生じるのでしょうか。
具体的には、次の3つが考えられます。
- 車体が重くなる
- 加速が鋭くなる
- 走行中は静かになる
順に詳しく見ていきましょう。
1.車体が重くなる
モーターにエネルギーを供給するために欠かせないバッテリーですが、こちらはかなりの重量部品。バッテリーの重さ問題は各自動車メーカーが頭を悩ませています。
年々軽量で高性能なものが開発されていますが、現在も大容量にすればするほど大きく重くなる傾向にあります。
車種によってはEV車の方がガソリン車より100kg以上重いこともあり、タイヤへの負担は今までのガソリン車と比較にならないほど大きくなると言えるでしょう。
2.加速が鋭くなる
モーターは低い回転から高トルクを発生する特性があるため、アクセルを踏み始めた瞬間から鋭い加速力を発揮します。
これは回転数に比例するようにトルクが大きくなるガソリンエンジンと逆の特性となるため、同じ車種でも乗り味はガラリと異なります。
3.走行中は静かになる
一部のEV車は発電用として補助エンジンを搭載することもありますが、基本的にEV化することで内燃機関はなくなるため、走行中は静かになります。
ただし完全に無音になることはありません。
走行中の風切り音やロードノイズなど、これまで気にならなかった音が聞こえてくることがあります。
また、メーカーによっては安全上の理由で走行中は人工的に作られた走行音を発生させる仕様にしているEVもあります。
電気自動車(EV)用のタイヤとして求められる性能
先ほどご紹介した3つの特徴から、EV用のタイヤに求められる性能を考えると、
- 重い車体を支えられる強度
- 鋭い加速による激しい荷重移動が起きても摩耗しにくい耐摩耗性
- これまで気にならなかったロードノイズを抑える静粛性
- 走行によるエネルギーロスを抑える燃費性能
などがあげられます。
そう考えると、高トルクに耐えられるスポーツタイヤのような剛性やグリップ力、コンフォートタイヤのような静粛性、エコタイヤのような燃費性能と、すべての性能が高いレベルで要求されることになります。
そのため、各タイヤメーカーはこれまで培ってきた技術を駆使し、新しく高品質なEV向けのタイヤの開発を進めています。
次項からは、すでに販売されているおすすめのEV用タイヤをご紹介していきます。
おすすめの電気自動車(EV)用タイヤ
EV車は基本的に既存モデルのパワートレインを変更するか、新たなプラットフォームで開発するかのどちらかの方法で作られます。
もちろんタイヤも同じで、メーカーはEV専用、EV向けタイヤを新規開発したり、既存のタイヤラインナップにEV向けに改良を加えたものを追加したりしています。
まずはEV専用に開発されたおすすめのタイヤを見ていきましょう。
- ミシュラン E-プライマシー(E·PRIMACY)
- ミシュラン パイロットスポーツEV(PILOT SPORT EV)
- ブリヂストン エコピアEV-01(ECOPIA EV-01)
- ダンロップ e.スポーツマックス(e.SPORT MAXX)
ミシュラン E-プライマシー(E·PRIMACY)
快適性と優れたツーリング性能を持つ「プライマシーシリーズ」の特性を活かして新たに開発されたタイヤです。ミシュラン史上最高の低燃費性能を誇るプレミアムコンフォートタイヤとして登場しました。
新開発の高弾性ゴムや新素材のスチールベルトを採用することで転がり抵抗を極限まで低減。プライマシー4と比べると18.4%も低減に成功しており、「転がり抵抗性能」のグレーディングでは最高ランクの「AAA」を取得しています。
また、サイレント・リブテクノロジーによって静粛性も高められており、モーター走行時でも快適にドライブが楽しめます。40サイズが「低車外音タイヤ」としても認定されているのもポイントです。
2022年に登場した新型クラウンクロスオーバーの新車装着タイヤ(225/45R21)としても採用されており、次世代のフラッグシップモデルとも相性抜群のタイヤです。
発売日 | 2021年8月 |
サイズ | 15~21インチ 41サイズ |
特徴 | ・転がり性能は最高ランクの「AAA」を取得 ・モーター走行時でも優れた静粛性を発揮 |
ミシュラン パイロットスポーツEV(PILOT SPORT EV)
環境性能はもちろん、スポーツドライビングの愉しさも損なわないように開発されたスポーツドライビング志向のEV向け低燃費タイヤです。
高いグリップ力を持つスポーツタイヤでありながら、転がり抵抗性能は「AA」を取得。本来は相反するグリップ性能と低燃費性能が高いレベルで両立しています。
トレッドのセンター部分にはフォーミュラEで培われた「エレクトリックグリップ コンパウンド」が採用されており、EV車の持つ蹴り出す力もしっかり路面に伝えてくれます。
また、タイヤの裏面にはノイズを抑える特殊フォームが設置されており、ロングドライブ時の疲労も軽減。スポーツタイプのEV車やハイブリッド車に履かせるタイヤとしてこれ以上のものはないのではないでしょうか。
発売日 | 2021年9月 |
サイズ | 19~22インチ 20サイズ |
特徴 | ・高いグリップ性能を持つスポーツタイヤ ・静粛性も高くロングドライブにも最適 |
ブリヂストン エコピアEV-01(ECOPIA EV-01)
ブリヂストンが早くからEV専用に発売していたタイヤで、低燃費タイヤシリーズの「エコピア」の持つ高い環境性能にEVに求められる静けさやライフ性能が追加されています。
微細構造を制御したブリヂストンの独自技術「ナノプロ・テック™」はゴムのエネルギーロス低減に大きく貢献。ガソリン車と比べて転がり抵抗の影響を受けやすいEVの燃費(電費)性能をしっかり伸ばせる設計になっているのがポイントです。
また、ショルダー部分の偏摩耗も抑制する効果もあるため、ロングライフ性能も持ち合わせています。
サイズは5種類と少なめですが、ロングセラーのタイヤで信頼性も抜群。選んでおけば間違いのないタイヤです。
発売日 | 2012年11月 |
サイズ | 15~17インチ 5サイズ |
特徴 | ・電気自動車(EV)の特性に合わせて開発された専用タイヤ ・偏摩耗の抑制でロングライフ性能もしっかり実現 |
ダンロップ e.スポーツマックス(e.SPORT MAXX)
ダンロップ史上最高レベルの低燃費(電費)性能を誇ると言われている新開発のEV向けタイヤです。
ダンロップ独自の技術「サイレントコア(特殊吸音スポンジ)」が採用されており、優れた静粛性を実現。タイヤ自体も軽量に作られており、省資源化も測られています。
こちらは日本に導入されているものではなく、まず2023年にEV化が急速に進んでいる中国に先行投入された製品となります。
欧州での販売も決定されており、今後も展開が広がることが期待されるタイヤです。この先日本市場への導入も十分ありえる注目のEVタイヤだと言えるでしょう。
発売日 | 2023年(中国) |
特徴 | ・ダンロップ史上最高の低燃費(電費)を実現 ・タイヤ自体も軽く環境性能の低減に貢献 |
電気自動車に対応できるように性能強化されたタイヤ
ドイツのタイヤメーカーコンチネンタルでは、すでにラインナップに含まれているタイヤをEV向けに性能強化して販売しています。
こちらも詳しく見ていきましょう。
スポーツコンタクト7(SportContact 7)
街乗りはもちろん、本格的なサーキット走行も楽しめるタイヤです。
トレッド面に採用されているアダプティブ・パターンはウェット路面でも安定したグリップを発揮し、高速走行でも安定して走行できます。
サイドウォールにはチェッカーフラッグの模様が施されており、スポーツタイヤらしいビジュアルをしているのもポイントです。
発売日 | 2022年6月 |
サイズ | 18〜23インチ 37サイズ |
特徴 | ・サーキット走行もできるスポーツタイヤ ・最大23インチで大径ホイールにも対応 |
プレミアムコンタクト7(PremiumContact 7)
天候に左右されない優れた操縦安定性と快適な乗り心地のコンフォートタイヤです。
排水性に考慮されたトレッドデザインのおかげでウェット路面でのコーナリングやブレーキなどの入力にもしっかり反応。
横Gが加わると接地面積が増えるような構造になっているため、ドライ路面でも余裕のある走りができます。
発売日 | 2023年4月 |
サイズ | 17〜19インチ 15サイズ※一部サイズは2023年8月発売 |
特徴 | ・装着車両の特性に合わせたハンドリングを実現 ・走り出しから安定したグリップ |
エココンタクト6(EcoContact 6)
スポーツ性能も持ち合わせているハイパフォーマンス・エコタイヤです。
転がり抵抗、ウェットブレーキ性能、耐摩耗性、この3つの相反する性能を高次元で両立させているのが1番のポイントです。
従来品のエココンタクト5と比較すると、耐摩耗性能20%、転がり抵抗性能15%、ハンドリング性能17%と、大幅に向上しています。
これまでのエコタイヤではハンドリングやスポーツ性がもの足りないと感じていた方にもご満足いただけるタイヤだと言えるでしょう。
発売日 | 2019年3月 |
サイズ | 14〜20インチ 47サイズ |
特徴 | ・耐摩耗・転がり抵抗・ハンドリング性能が大幅に向上 ・ドライブも楽しめるハイパフォーマンス・エコタイヤ |
まとめ
2015年の「パリ協定」を皮切りに、世界各国でCO2の削減を加速させてきました。
パリ協定に合意した主要国のほとんどが2035年を目処にEV化を進める動きを見せており、車の歴史が大きく変わろうとしています。
これまでのガソリンエンジンとEVのモーターとでは根本的に構造が異なり、車の特性はガラリと変わります。
タイヤもそれに見合ったものを新たに開発する必要があるため、タイヤメーカーも変革期を迎えていると言えるでしょう。
求められる性能が高いEV用のタイヤは、現時点でラインナップはまだまだ少なめですが、この先も様々な種類のタイヤの登場が期待できます。
もちろん今回ご紹介したタイヤも高品質なものばかり。この中から選んでおけば、まず間違いないでしょう。
また、もしタイヤ選びでお困りであれば、相広タイヤ商会 タイヤガーデン川越までご相談ください。
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